2018年の食品衛生法改正により、野菜販売に関する制度が変更されました。以前は販売許可が不要だった方も、現在では販売許可の届出を必要とする可能性があります。
野菜販売をしている方はいま一度、自分が販売許可取得対象者かどうかを確認しましょう。
販売許可の有無はそのルートによる
野菜の販売ルートはいくつかあり、個人販売も可能です。ただし、販売する際には「販売許可」を必要とする場合があります。
ここでは主な販売ルート4つを例に、販売許可について解説します。
①インターネット販売
近年急速にシェア拡大している販売ルートが、インターネット販売です。
生産者自らインターネット販売するのであれば、販売許可は不要です。ただし、生産者自ら販売するとしても、ジャムやドレッシングなどの加工品を製造販売するのであれば「食品衛生責任者資格」と、保健所による営業許可を取得しなければなりません。
生産者以外が仕入れ販売を行う場合、もしくは複数の生産者で共同販売したり、協同生産した作物の販売をしたりする場合には、「野菜果物販売業」の届出が必要です。詳しくは後述します。
インターネット販売には、大手のインターネット野菜販売店に卸す方法と、個人でネットショップを展開する方法があります。後者の場合、特定商取引法に基づいた表示義務が生じることに気を付けましょう。
②農協を経由した販売
農協は農業協同組合の略で、JA(Japan Agricultual Cooperatives)とも呼ばれています。昔から全国にある、もっとも一般的な野菜販売ルートです。
農協を経由した野菜の大半は、卸売市場を通り、消費者の元へ届けられます。生産者が販売許可を得る必要はありません。ただし、農産物加工品を売る際は営業許可が必要です。
③道の駅や直売店での販売
生産者が道の駅や直売店に直接持ち込む販売ルートです。
国土交通省がけん引役となり、地元の消費者だけでなく観光客も訪れ、高い集客力がある道の駅も少なくありません。野菜販売ルートとしては、農協に次ぐシェアを占めています。
生産者に販売許可は不要ですが、直売店を経営し他農家の野菜も販売している場合は、後述する「野菜果物販売業」の届け出による販売許可が必要です。さらに、農産物加工品を売る場合はそちらの営業許可を取得しなければなりません。
④移動販売・配送
トラックや自動車を使い、イベントや公道などで出店する移動販売の形式です。販売場所にこだわらないスタイルですが、場所によっては許可が必要です。
イベントスペースに出店するのであれば、イベントの運営元に野菜販売が可能かを確認します。公道であれば、その地域の役所で道路使用許可を取らなければいけません。
仕入れ野菜を販売する場合、後述の「野菜果物販売業」の届出も併せて必要です。
消費者と契約して野菜を配送する形式もあります。この形式も、自家栽培のものであれば許可は不要ですが、仕入れ野菜の販売であるのなら「野菜果物販売業」の届け出が必要です。
野菜の販売許可に必要な「野菜果物販売業」について
野菜の仕入れ販売をするのであれば、「野菜果物販売業」の届出が必要となります。ここでは、「野菜果物販売業」について詳しく解説します。
野菜果物販売業とは
野菜や果物の卸売あるいは小売をする業種のことを「野菜果物販売業」といいます。
2018年6月の食品衛生法改正に伴ない、保健所への届出が必要な業種に新たに加わりました。
「野菜の仕入れ販売」「複数の農家(野菜生産者)が収穫物を持ち寄り共同で販売」「複数の農家で協働生産した野菜の販売」の営業をする場合に届け出が必要です。
自ら生産・収穫し、未加工で直売する分には届出が不要とされています。未加工品の直売は営業ではなく、出荷に当たることが理由です。
参考「東京都福祉保健局:新たに食品に関する営業を始められる皆さんへ」
届出に必要なものと届出先
届出に必要なものは「営業届出書」と「食品衛生管理者の資格を証明するもの」です。
法改正前は、届出同様に食品衛生管理者の設置は不要でしたが、現在では必要です。届出を提出する前に、食品衛生管理者資格を取得しておきましょう。
届出の提出先は、営業する地域の保健所です。もしくは、厚生労働省のHPよりオンライン申請も可能です。
参考「東京都福祉保健局:新たに食品に関する営業を始められる皆さんへ」
その他野菜の販売許可に関する法律
野菜果物販売業の届出以外にも、野菜販売をする方なら知っておくべき法律があります。
食品表示法
食品表示法とは、食品を摂取する消費者の安全性確保や、消費者が自主的で合理的な食品選択を可能にするための法律です。
食品表示法第4条において、食品表示基準が策定されています。名称・原材料・アレルゲン・消費期限など表示すべき事項が定められており、違反すると罰則があります。法人の場合なら1億円以下の罰金、法人以外の違反者は1年以下の懲役あるいは100万円以下の罰金です。
参考「厚生労働省:食品表示法の概要」
食品衛生法
食品衛生法とは、飲食による健康被害発生を防止するための法律です。2018年に法改正されました。
改正概要の1つに「HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理」の制度化があります。HACCPとは、原材料の入荷から製造・出荷に至るまでの全工程中、食の安全性を確保するために特に重要な工程を継続的に管理する手法です。すべての食品等事業者が対象です。
野菜の販売について気をつけるポイント
法律面以外にも、野菜販売をする際に気をつけるべきポイントがあります。
特にインターネット販売の場合、注文が入ってから顧客の手元に届くまでに時間を要します。商品が到着した時点で鮮度が十分保たれていることが重要です。配送先の間違いや時間の遅れなど、配送トラブルが起こる可能性も考えられます。どのようなトラブルが起こるか想定し、対処法をあらかじめ考えておくとよいでしょう。
無人の直売所を設ける場合は、セキュリティ対策が必須です。商品や売上金が盗まれないように、監視カメラやコインロッカー型直売所の設置がおすすめです。コインロッカー型は雨よけ対策にもなります。コインロッカー型を使わない場合は、雨よけ・日よけになる屋根の設置をしましょう。
まとめ
今回の記事では、野菜販売における法律を中心に解説しました。同じ野菜でも、届出の対応が自家栽培か仕入れかによって異なります。
法律は改正されることがあるため、今回お伝えした内容がいずれ変更されることも考えられます。知らない間に法律違反をしていることにならないよう、売上面だけでなく法律にもアンテナを張っておきましょう。
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