「オーガニック野菜」「無農薬野菜」「有機野菜」このように表示されれば、身体によいイメージがあるのではないでしょうか。しかし、それぞれがどのようによいのかというと、漠然としており、混同してしまいがちな言葉です。
この3つの言葉はただ表現が違うというだけではなく、定義や意味に厳密な違いがあります。
農法の違い、農薬の使用の有無など、それぞれについて意味の違いや特徴、これらの野菜を選ぶメリットについて解説します。
有機野菜は有機JAS認証を取得した野菜
有機野菜とは、農林水産省が認めた認証組織(JAS)が定めた規格に適合しているかを審査され、合格した野菜です。
自然の理に反しない栽培を目的としており、生態系を崩さないこと、使用禁止素材を使用しないこと、化学処理をしていないことが条件として含まれています。
一方、無農薬を絶対としているわけではなく、JASに設定された基準値の範囲内で、特定の農薬を使用することは認められています。
このようにJAS認定組織の定めた基準を満たし、審査を通過すれば、JASマークを掲示可能です。
JASマークがつけられた野菜には、「有機農産物」「有機栽培」「有機〇〇」などの表記ができます。
オーガニック野菜という記載についても同じように、JASマークの取得が必要です。
オーガニック野菜はIFOAMの基準を満たす有機野菜
オーガニック野菜とは、IFOAM(国際有機農業運動連盟)の4つの原則を基準とした条件を満たした野菜のことです。
4つの原則は「生態系」「健康」「公正」「配慮」で、自然にあるものはお互いに影響し合って成り立っているという考えから生まれました。
IFOAMの定義では原則として、生態系を崩さずに栽培し、化学農薬や化学肥料を使わずに地球環境に配慮することが求められます。また、人々が公正に栽培することを求めており、児童労働や植民地での栽培、そのほかにもさまざまな格差を拡大することは禁止されています。
無農薬野菜は商品への表記が禁止されている
無農薬野菜は、現代ではあまり作られません。これは、無農薬にこだわる農家がいなくなったということではなく、完全に無農薬にできないことが理由です。
たとえば、無農薬栽培を始める前に使われた農薬が土壌に残っていたり、近隣の畑から拡散した農薬が付着したりすることで残留農薬が検出されることがあるのです。そのため、完全な無農薬栽培という考え方は、あまり現実的ではないといえるでしょう。
今では無農薬野菜と表記が禁止されており、正式には「特別栽培農産物」と表示します。
野菜の栽培方法3種類
野菜の栽培方法には慣行栽培・有機栽培・特別栽培の3種類があります。
ここでは、農薬や肥料の使い方による栽培方法の違いについて具体的に解説します。
①慣行栽培
慣行栽培とは、一般的な栽培方法です。農薬や化学肥料を使用しており、栽培方法は特に表示されません。
とはいえ、農薬や化学肥料が使い放題というわけではありません。
農薬の試験で有毒性が認められない最大量の1/100の量が、安全性の基準とされています。
ごく一般的な栽培方法であるため、「慣行栽培」と表示されることはありません。
②有機栽培
有機野菜やオーガニック野菜は、農薬や化学肥料を極力使用せず、遺伝子組み換えも行わないという栽培方法です。
自然の循環機能の維持促進を図るために、農林水産省が定めたJAS規格では以下のように厳しいルールが定められています。
堆肥等で土作りを行い、種まきまたは植え付けの前2年以上、禁止された農薬や化学肥料を使用しない土壌の性質に由来する農地の生産力を発揮させる農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減遺伝子組み換え技術を使用しない 引用元「農林水産省:生き物にやさしい日本を残したい「有機食品」っていいね!」 |
ルールを守り、JAS認定を受けた生産者だけがJASマークを掲げ、野菜に「有機栽培」と表示できます。
③特別栽培
慣行栽培や有機栽培以外の栽培方法を特別栽培といい、農薬や化学肥料の使用する割合は5割以下と制限されています。
以前は農家によって無農薬に対する考えにばらつきがあり、農家の考えに従って「無農薬」としていましたが、現在は考えを統一したルールがあります。前述の通り、完全な無農薬となると現実的ではないため、正しい表記は「特別栽培」としています。
無農薬野菜と特別栽培農産物との関係
無農薬野菜という言葉に明確な基準はなく、生産した農家ごとに定義が異なるため、「無農薬」と商品に表示された場合、消費者に誤解を与えてしまいます。
そのため、平成19年に「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」が定められました。
農薬を使用する割合を5割以下と定めたガイドラインに則って作られた野菜は「特別栽培農産物」と表示できます。
特別栽培農産物とは、特別栽培された野菜で、JASの認証を受けた信頼性のあるものです。
現在は、「無農薬」とだけ表示することはせず、以下のように細かく表示することで、農家のこだわりを消費者にアピールできます。
「農薬:栽培期間中不使用」「節減対象農薬:栽培期間中不使用」「化学肥料(窒素成分):栽培期間中不使用」「節減対象農薬:当地比 ○割減」又は「節 減対象農薬:○○地域比 ○割減」「化学肥料(窒素成分):当地比 〇割減」又は 「化学肥料(窒素成分):〇〇地域比 〇割減」 参照:農林水産省「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」 |
オーガニック野菜/無農薬野菜/特別栽培農産物の見分け方
野菜を選別する際に迷ってしまう、「オーガニック野菜」「無農薬野菜」「特別栽培農産物」の見分け方については、ズバリ「有機JASマーク」を確認することがおすすめです。
これらの記載にはルールが定められており、JASマークをつけた野菜のみが「有機〇〇」「オーガニック」と記載することを許されています。
また、特別栽培農産物に関しては、「特別栽培〇〇」と野菜名が表示されているでしょう。
現在は「無農薬」とだけ表示することは禁止されているため、特別栽培農産物に「農薬:栽培期間中不使用」などと、農薬の有無や農薬を制限したことが分かりやすく記載されています。
このように、日本のオーガニックマークは有機JASとされていますが、その一方で海外のオーガニック商品に関しては国によりさまざまなマークがあります。海外で使われているマークを知らなければ、海外のオーガニック野菜を見分けることは難しいでしょう。
有機農業と有機農産物に関する農水省の定義
この章では、農林水産省が定めた、有機農業や有機農産物に関する定義について解説します。
有機野菜や無農薬野菜の生産方法を、農林水産省では大きく「有機農業」に分類しています。
一般的には、「有機農法」や「自然農法」と呼ばれ、環境にかかる負荷をできるだけ少なくした生産方法です。
また、JAS規格に従って栽培された農産物についても具体的に説明します。
有機農業とは
有機農業とは、生物の多様性を尊重し、生態系を壊さずに循環機能を維持することを原則とした農業の生産システムです。
有機農業では、健全な土で資源を循環させ、健全な水環境を整えることで、農業が持続的に発展しなければなりません。
有機農業推進法によれば「化学的に合成された農薬・肥料を使用しない」「遺伝子組み換えをしない」とあり、環境への負荷を低減した生産方法で行う農業と定義されています。
参考:農林水産省「有機農業・有機農産物とは|【有機農業関連情報】トップ」
有機農産物とは
有機農産物とは、土壌の性質を活かした土づくりで生産力をアップさせると共に、環境への負荷を極力なくした栽培方法で、JAS規格に則って生産された農産物のことを指します。
審査の際には、JAS規格のルールに従って生産されているのかを第三者機関が審査し、見事合格した生産者に「有機JASマーク」の使用が認められます。
参考:農林水産省「有機農業・有機農産物とは|【有機農業関連情報】トップ」
オーガニック野菜(有機野菜)の4つのメリット
一般的に売られている野菜に付加価値がついたオーガニック野菜ですが、オーガニック野菜にはどのようなメリットがあるのかをご存知ですか。
4つのメリットを知って、野菜を選ぶ際に参考にしましょう。
①健康への配慮がある
昨今の健康ブームでは、農薬や化学肥料が与える人体への影響が懸念されています。
多量に農薬や化学肥料が使われると、野菜に硝酸態窒素という化学物質が溜まっていき、健康被害を被る可能性があるのです。
オーガニック野菜は、農薬や化学的に合成された肥料を制限しているため、一般的に売られている野菜よりも、健康に配慮した野菜選びができます。
参考:環境省「未来へつなごう!私たちの地下水〜気づいていますか?龍酸性窒素汚染~」
②栄養価が高い
オーガニック野菜は、栄養価が高いと言われています。野菜不足と言われている現代で、少しでも栄養が取れるものを選べば健康促進につながります。
野菜は「フィトケミカル」という成分を出すことにより、病気や害虫から身を守っています。
農薬や化学肥料を極力使わないオーガニック野菜は、フィトケミカルを多く出しており、その成分には、ポリフェノール・リコピン・ビタミンCなどの美肌に期待できる栄養素が多く含まれています。女性なら特にオーガニック野菜を選び、その効果に期待したいところです。
③味わいがある(おいしい)
オーガニック野菜はおいしいと言われる理由がきちんとあります。
化学肥料で野菜を育てた場合、急成長する野菜に栄養素が追いつかないことがあります。
化学肥料をできるだけ抑えたオーガニック野菜なら、野菜本来の味をしっかり味わえるでしょう。
④環境によい
オーガニック野菜は、環境に配慮して栽培をしています。
農薬や化学肥料が土壌を汚染することをできるだけなくしているため、土に住む微生物や虫、小動物への悪影響が少ないのです。
生態系を維持しやすいことは、地球の環境に配慮しているといってもかまわないでしょう。
SDGsが叫ばれている昨今、オーガニック野菜を選ぶことは、あなたができる環境問題に配慮した1つの取り組みになるといえます。
オーガニック野菜(有機野菜)の3つのデメリット
前述の通り、オーガニック野菜を選ぶことにはさまざまなメリットがあります。しかし、反対にデメリットもあるため、両方を天秤にかけて、どちらを選ぶかを考慮する必要があります。
人次第では、デメリットについて気にしない方もいるでしょう。
ここでは、オーガニック野菜を選ぶときの3つのデメリットを解説します。
①見た目がよくない場合がある
オーガニック野菜は、形や色がよくないものがそろっていたり、曲がっていたり凹んでたりすることもあります。
化学肥料を極力使わないように栽培しているため、虫食いで穴が空いている場合もあるでしょう。
通常、そのような野菜は出荷に適さない場合が多く、オーガニック野菜を見かけることが少ないと感じることもあります。
見た目がよくない場合でも、オーガニック野菜は普通の野菜と変わらず、むしろ栄養価が高い場合もあります。販売場所を選ばなければならない現状は、見直してほしいものです。
②品質が揃っていない場合がある
オーガニック野菜は、肥料を使わないため、育てる土壌次第で品質にばらつきが出ることがあります。
しかし、このデメリットは、ICTを使って行うスマート農業を導入すれば解決するでしょう。
スマート農業は、生育環境の管理をICTで行うことで、品質の均一化や生産の効率化が見込める、次世代の農業モデルです。
品質が揃えば、ブランドが確立し、オーガニック野菜をよりよくできますね。
③価格が高い
オーガニック野菜の栽培には、生産コストや管理コストがかかるものです。手間暇をかけたオーガニック野菜に価格が反映されています。
ほかにも、有機JASマークを取得するためには、実施審査を受け合格するためのコストもかさむのです。
そうしてコストと労力を使ってできあがったオーガニック野菜は、残念ながら需要も少なく、安くはならないのです。
特別栽培農産物(一部の無農薬野菜)のメリット・デメリット
特別栽培農作物のメリットとデメリットについて解説します。
有機農産物に比べて農薬や化学肥料の割合が少ないことで、農林水産省が認証し、一定の信頼性を集めています。
特別栽培農産物を選ぶことについて、参考になるでしょう。
①特別栽培農産物のメリット
指定された農薬の使用が認められた有機農産物に比べて、特別栽培農産物は、農薬の使用料を制限しており、なかには栽培過程で農薬を使用していない農家もあります。
そのため、土壌の生態系にもやさしい上に、特別栽培農産物を食べる人は、農薬による健康被害の心配は低減されます。
SDGsにも貢献できる農産物であり、自然と共生する持続的な社会の実現に寄与できるといえるでしょう。
化学肥料を抑えて、有機肥料を使う土壌では、微生物が大いに働き、野菜自体の成長力により栄養価が高くなります。
野菜本来の味わいを楽しめることもメリットの1つとして挙げられます。
②特別栽培農産物のデメリット
土壌の性質を活かした野菜作りであるため、環境や人体の影響に関してはよいことしかないように思えます。
しかし、生産者側からすれば、生産コストがかかり栽培期間が長くなるため、デメリットといえるでしょう。
安価で手に入る農薬と違い、有機肥料や農薬の代替品は高くつき、農薬を制限することにより、雑草の手入れや害虫の駆除は生産者の負担になっているのです。
また、生産コストは野菜の販売価格にも影響があり、消費者の手に渡るときには、慣行栽培の野菜よりも一回り値段が高いという傾向にあります。
栄養価が高く人体にやさしい特別栽培農産物は、長期的にみればメリットを感じられるものの、流通時点ではメリットを実感できないことは、デメリットだといえるでしょう。
オーガニック野菜が普及しにくい理由
オーガニック野菜は市場であまり見かけない傾向にあります。ここでは、どうしてオーガニック野菜が普及しにくいのかについて解説します。
まず生産者側がこだわりをもった野菜を作りたいと望んでも、生産性が悪く、集荷場も限定的のため、主力野菜とはなりにくいことが現状です。
加えて、農薬や肥料は特定のものでなければならないため、選定などで生産コストが増すこともあります。さらに、やさいの形や品質のばらつきにおいて、農協の基準にそぐわなければ、オーガニック野菜は扱いにくいものとなります。
次に消費者側として、目線を変えてみましょう。
一般の消費者は、野菜を選ぶ際に、わざわざ虫食いしている野菜や、形が悪いものは選ばない傾向があります。見た目や味を重視する日本の消費者は、環境保護への関心が弱いことが課題として挙げられます。
地球の環境問題に意識を向けて、オーガニック野菜を選び、需要が増えれば、オーガニック野菜があらゆる場所で普及していく未来となるでしょう。
オーガニック野菜/無農薬野菜を正しく認識しよう
「オーガニック野菜」「無農薬野菜」「有機野菜」など、市場ではさまざまな呼び方をしており、農林水産省ではそれぞれを明確に定義しています。
市場で探す場合には、有機JASマークで確認すれば、その野菜が有機野菜・オーガニック野菜であることが分かります。
人体への影響が懸念される農薬を使わない野菜を選びたいのなら、「特別栽培農産物」と表記されています。
SDGsにも貢献するオーガニック野菜。
見た目やイメージに惑わされずに、正しい意味を理解して野菜を選別しましょう。
ベジクルは、創業70年以上の歴史と実績を誇り、全国100社以上の提携パートナー企業と連携しています。
有機野菜や特別栽培・オーガニック野菜は生産量が多くないため安定入荷しにくいですが、ベジクルならこれらの野菜も安定供給できます。ベジクルがサポートすることで、オーガニック野菜だけを揃えたメニュー作りも可能です。
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